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こ、こここ、こんにちはー……。
御無沙汰しております。つらです。
まずはお知らせをひとつ。
リンクにあったTAKUさんのブログ(「己、碧の地」と「心風呂」)ですが、移転されました。
今までの世界観はそのままに、更にパワーアップ(?)しています。
わたしの表現力が乏しいので是非ご覧になってください。
こちらです⇒「響いたものを拾って」
なんか、もう久しぶりすぎて前回の記事が思い出に変わってます(ぁぅぁぅ
しのさん、こんなわたしに付き合ってくださって本当にありがとうございますっ!!
((コメ返しは追記にて))
あぁ、もう更新が激しく停滞中ですね……(遠い目
部活は美術部に入ったのですが、かなり忙しいです(´`;;)
死にそうです。もう、忙しくて忙しくて。
現在、あらぬ事まで考えてます。
もう、忙しくて忙しくて。
夏休みも部活やら文化祭の準備やらで多忙を極めそうです。
遊べません。
パソコンできません。
殺す気ですか。
愚痴って申し訳ないです……。
では、そろそろ退却します。
またいつの日か〜……。
凛と張り詰めた空気が、顔にあたる。夜明け前の街は街灯に照らされてぼんやりと輝き、家々を照らしていた。オレンジ色の街灯は薄明かりの中で次第に辺りと同化し、終いには完全になくなってしまった。
東の空に太陽が顔を覗かせる頃になると、小鳥が鳴き始め、人がちらほら見られるようになった。坂が多いこの街は、駅の方に行くにつれ人が増えてくる。
家と家の隙間を、一匹の黒猫が縫うようにして歩く。猫は軽快な足取りで表通りの魚屋に近づき、甘い声を出した。
「お、今朝も来たな」
頭が淋しくなりかけた魚屋の店主は、一番質の悪そうな魚を選び、猫の足元に放り投げた。猫は礼を言うようにミャオゥと鳴くと、魚を銜えて路地裏に戻っていった。
赤い屋根の上。猫は朝日を浴びながら先程貰った魚を食べ終え、眼下に広がる街並みを見下ろしていた。
ここは坂の上の方なので、街の様子が良くわかる。
ずっと向こうの方には青く煌めく海が見え、反対側には赤くなった山がある。潮風が朝の日差しを運んでくる。猫は目を細めた。そう遠くはないところには駅があり、人々が忙しなく出入りしている。
今日も、始まるんだな。このくだらない日々を意味のあるものにしようと、人々は駈けずり廻り、主役の座を我が物にしようとするのだろう。毎日同じことの繰り返しでも、それが積み重なれば有意義な、素晴らしいことが起こるのだろう。
黒猫はひとつ伸びをし、赤い屋根の上を後にした。
●
「人とは、廻り廻って、巡り巡ってゆくものだ。君には解るか?」
人ごみの中、彼は言いました。わたしは無言で首を横に振りました。
「そうか。それも良い。十人十色だ」
わたしよりも背が高く、黒い山高帽をかぶった四角い黒縁眼鏡の彼は、そう言って微笑み、歩き出します。人の狭間狭間を縫って歩く彼を、わたしは慌ててついてゆきます。これだけの人がいるのに、音はわたしと彼の歩くそれだけです。
「君には、此処から、何が見える?」
さっきから、この質問をずっと彼は訊いていますが、何の目的かはさっぱり解りません。
「人です」
わたしは、正直に答えました。さっきから、ずっとこの調子です。わたしは、見たものをそのまま答えるだけなのです。
「違うな。けれど、それも十人十色だ。では、私が君に何を見せたいか解るか?」
わたしは、無言で首を横に振りました。短い髪の毛が、唇にあたります。
「私が君に見せたいものは全て。人も、物も、景色も。この世の全てだ」
そう言って、また彼は人込みを縫うように歩き始めました。
(この世の、全て――?)
人は皆、動きません。歩いていた者。走っていた者。喋っていた者。手を繋いでいた者――。人々は皆、彼の魔法によって止められているのです。
頭上には、灰色の空がありました。
●
ふと気が付くと、我々は草原の上を歩いていました。どうやら、牧場のようです。突然我々が草原にいるのも、彼の魔法の仕業なのです。牧場では、風車が廻り、家畜が草を食んでおり、人が牛のお乳を搾っています。遠くには、海と空が何処までも『あおく』広がり、遠くの方で混ざり合っています。
何か呟く彼の周りから、玉虫色の光が沸々と湧き上がり、それが廻るようにしてわたしたちを取り囲んだかと思うと、ぱあっと辺りに広がりました。空も、海も、草原も、人も、風車も、家畜も、厩舎も、何もかも玉虫色になったかと思うと、次の瞬間、全てのものは色を取り戻しました。ただし、空と海以外は――。空と海は、先程の街のような灰色になっています。ほんの一寸【ちょっと】前までは、素晴らしい『あお』でした。
先程の街も、このようにして時間を止めたのです。
「此処から、何が見える?」
唐突に、彼がわたしに訊きました。
わたしは、ようく考えて「空と海……でしょうか?」と答えました。
彼は、ふふっ、と笑って、わたしの手をとり、突然走り出しました。
「わあっ。な、何ですか? どうしたんですか?」
「言ったろう? 私が君に見せたいものはこの世の全て!」
ふと前を見ると、目の前には崖が迫って来ます。その下は陸ですが、落ちたらひとたまりも無いでしょう。そして、次の瞬間、わたしたちは崖から飛び出したのです。彼は、かぶっていた黒の山高帽を片手で押さえ、もう片方の手には、わたしの手がしっかりと握られています。不思議なことに、黒縁の眼鏡は風で吹き飛ぶということはありませんでした。一方、わたしの空いているほうの手は、虚しく空に抛られています。凄まじい風がわたしたちを煽りますが、彼はしっかりとした足取りで空を歩いています! 「何故?」という疑問よりも先に、驚きがわたしの心のなかに渦巻きました。彼の歩みはゆっくりですが、確実に、一歩、一歩、歩いているのです。わたしは只々、風に煽られていました。
「大丈夫! 自分を信じて!」
混乱するわたしを見て、彼は叫びます。風が耳元でもの凄い唸り声をあげ、彼の声を掻き消そうとしましたが、無駄でした。彼の声は、わたしの心の中でこだまするのです。
「で、でも!」
焦るわたしに、彼はもう片方の手を差し伸べましたが、風に煽られるわたしは、彼の手を掴むことすらできません。不思議なことに、黒の山高帽も風に吹き飛ぶということはありませんでした。
「致し方ない。この手を離さぬよう!」
彼はわたしに向かって差し伸べていた手を山高帽に戻し、前を見据えました。わたしはまだ風に煽られています。喉はカラカラに干からび、声も出そうもありません。一方、彼はじっと陸を見据え、空中をまるで我が庭のように闊歩しています。風に靡【なび】く彼の黒いコートは、まるで、わたしを避けるかのように見事にわたしに当たらないのです。
そのうち、草原はいっそう近くなり、遂にあと十数メートルになりました。彼は落ち着いています。
「陸にぶつかってしまいますよ!?」
カラカラの喉ですが、これでもか! という大声で叫びました。
「心配御無用! このまま空を歩く故!」
彼がそう言うか言い終わらないうちに、我々は今度は崖に平行に、つまり、草原の上を浮くようなかたちで歩きました。
「さあ、ここなら貴女も脚がつく筈」
なるほど。確かに脚がつきました。しかし、何という摩訶不思議な感覚でしょう! わたしは興奮冷めやらぬまま、空中をよたよたと歩きます。彼はわたしの隣で、微笑みながら気持ち良さそうに歩いています。
「これを飲みなさい」
彼は何処からともなく、水の入ったワイングラスを取り出し、わたしに差し出しました。わたしは有難くワイングラスを受け取り、ぐいっと飲み干しました。どうやらレモン水だったようで、口の中にさっぱりとした酸味が広がります。これでわたしの喉は完全に潤されたわけです。
「有難う御座います」
彼にワイングラスを差し出すと、彼の手に触れた瞬間、ワイングラスは粉になり、風にさらわれてゆきました。
「気持ち良いですね!」
わたしは両手でバランスをとりながら、綱渡りのようにして歩きました。特に意味はありません。少し間隔をとった先にいる彼は、わたしを見て微笑んでいます。
「もう少し歩くと海に着く。そうしたらまた落ちるぞ」
「え!? 落ちるんですか?」
彼は頷きました。
「今度は、さっきより良いものを見せて差し上げよう」
●
彼の言った通りでした。わたしたちは『あおく』輝くはずの海に着きました。
「さあ、ゆこう」
彼はわたしの手をとり、海へと飛び出しました。わたしたちは崖沿いを海に向かって足から落下してゆきます。今度は歩くことなく、そのまま落ちてゆきます。折角潤した喉も、あっという間にカラカラになります。彼はわたしに身体を寄せ、空いているほうの手を繋ぎました。つまり、わたしたちはお互いに向き合うかたちで、両手を繋ぎながら落下してゆくというわけです。彼は至って冷静ですが、わたしもさっきよりは冷静でした。
「さあ、見せてあげよう」
そういった彼は、わたしを抱き寄せました。すると、わたしの身体は、彼のなかに溶けてゆくのです。驚きと喉の渇きで声も出せずにいるわたしは、彼の顔を見上げました。非常に穏やかな顔をしています。微笑んでいるのです。
「大丈夫。落ち着いて」
そういって彼は、わたしの頭を撫でました。
わたしたちは、只々、海へと落ちてゆきます。
●
気が付くと、わたしの前には走馬燈のように風景が巡っています。
忘れ去られたような自転車。燃ゆる街灯。煉瓦造りの家。重たそうな戦車。笑う子ども。輝く海。暗い洞窟。走る兎。それを追いかける虎。舞い散る桜。朱い夕陽。気高き鷲。堂々と空を滑る飛行機。夜の砂漠。人を乗せる駱駝【ラクダ】。何処までも続く空、海、陸。廻る風車。群れる鴉【カラス】。凍った大地。寄り添うふたり――。
人。魚。虫。鳥。獣。街。港。市場。家。川。山。モノ。モノ。モノ――。
●
彼女の見ているものは、全て私の記憶である。
今まで、幾多のものを見、触り、感じ、嗅ぎ、聴いてきた。しかし、これは全てではない。私が見、触り、感じ、嗅ぎ、聴いてきたもの等、この世界の一握りなのだ。
何故彼女を選んだか、それは自分でも解らない。今まで彼女に「此処から、何が見える?」と訊いてきたのだが、その答えは彼女には解るまい。解る筈あるまい。
私は海に落ちた。それでも、どんどん降下してゆく。彼女は今頃何を見ているのだろうか。
●
海に落ちる前、彼の言っていていたことが解った気がしました。今見たものが、『さっきよりも良いもの』だったのです。『あおく』輝く海は、『さっきよりも良いもの』ではなかったのでしょう。
●
気が付くと、わたしは草原の上に寝そべっていました。潮風がわたしを優しく撫で、目を覚ましたのです。横を見ると、彼が座っており、海の遠くの方を眺めていました。
海も空も、本来の色を取り戻し、光り輝いているところをみると、彼の魔法は解けたようです。
頭上を、大きな鳥が過【よ】ぎりました。
「目が覚めたかい?」
起き上がったわたしに、彼は訊ねました。
「はい。あの、さっきのは……?」
「私の記憶だよ」
●
話を聞くと、わたしが見たものは、彼の記憶だそうです。
彼は魔法を使って、世界と時代を駈け、色々なものを見てきたと言うのです。
「しかし、私が見てきたものなど、この世界のほんの一握りにすぎないよ」
話が終わると、彼はそう言って立ち上がり、歩き出しました。また、違う世界に向かうようです。
「君には、もっと沢山のものを見てもらわねばならない。世界は広いのだ」
わたしも、彼に続いて立ち上がりました。潮風が草原を撫で、短い草が波紋のように靡いてゆきます。
●
「いざ、新たなる世界へ!」
●
<了>
それは、よく晴れた2月のことだった。
中学校から家に帰る途中で、私は、お気に入りのチェックのマフラーに顔をうずめ、重たいかばんを背負い、遠い家路をてくてくと歩いていた。
本当は学校には自転車で行っていた。
けれど、昨日の帰り道、無残にも自転車のタイヤはパンクしていまい、30分かかる道のりを歩かなければならなくなってしまったのだ。
昨日行こうと思っていた自転車屋は休みだった。
誰かが一緒だったなら、まだいい。
でも、友達は少ないほうだし、みんな学校の近くに住んでいるから、必然的に一人で帰れなければならないのだ。
私は、眼下に広がる夕暮れの土手を見た。
下のほうでは、小学生が野球やサッカーをやっていたり、犬の散歩をしている人がいたりと、みんな思い思いの時間を過ごしている。
なんだか、自分だけが夕焼けに取り残された感じがした。
私の頭の中は音楽の授業でやった歌がぐるぐると回っていて、途中で買ったあったかいミルクティーも、私の手の中で寂しそうにしていた。
「宮田ーっ」
後ろから名前を呼ばれて振り返る。
正直、かなり驚いた。
後方から自転車をこいでこちらに向かってくるのは、同じクラスの佐瀬だった。
そんなに親しいわけでもないが、無視するのはちょっと悪いので、私は佐瀬がこちらに来るのを待った。
佐瀬は私の隣で止まり、よっ、と言った。
「あ、うん」
よくわからない返事をし、私はちょっと後悔した。
「あれ?宮田ってチャリじゃなかったっけ?」
「うん。そうだけど、パンクしちゃって……」
私は苦笑いと一緒にそう答えた。
「そっかー。それじゃ、しょうがねぇな」
そういって佐瀬は自転車から降り、私の隣で歩き出した。
呆然と立ち尽くす私を、少し先に行った佐瀬は、いくぞ、と手招きし、あわてて佐瀬の後を小走りでついて行った。
こうやって並んで歩いてみると、佐瀬は私よりだいぶ背が高いことに気づいた。
「なんだよ」
佐瀬の言葉に、無意識に彼を見ていた自分に気づく。
「あ、背が高いなーと思って」
私はそう言ってうつむいた。
さっきまで手の中で寂しそうにしていたミルクティーが、いつの間にか元気を取り戻していた。
「そうそう。俺って実は背ぇ高いんだよ。つかお前がちっちゃい」
そういって悪戯っぽく佐瀬は笑った。
そして、冗談、といってまた彼は笑みを見せた。
男の子と、こうやって並んで歩くのは久しぶりだった。
小学校のころは何度かあったが、中学に入り、2年になってからはこれが初めてで、なんだか緊張した。
私は前を見ているんだか見ていないんだかわからないような状況で、なんとなく佐瀬にペースにあわせて歩いていた。
佐瀬はポケットから何かを取り出し、手ぇ出して、と言った。
私は持っていたミルクティーを右手に持ち、左側にいる佐瀬に空いた左手を差し出した。
すると佐瀬は、私の手の中に2,3個飴を落とし、ほい、と言った。
「ありがとー」
と言って、飴をひとつ口に入れる。
コーヒーキャンディだった。
佐瀬もひとつ飴を口に入れ、うまいね、と笑った。
私は微笑んで、うん、と答えた。
「そういえばさ、宮田って、家どこ?」
「ここで降りたとこ。コンビニの近くの緑のアパートだよ」
土手がちょうど分岐点に差し掛かったころだった。
「そっか。じゃ」
と言って、佐瀬は自転車に乗った。
もう、おわりかぁ。
楽しかったな。
と、頭の片隅で思った。
「あ、それじゃあ、気をつけて帰ってね」
私は言った。
「いつ俺、もう帰るねって言った?」
頭の上に、クエスチョンマークがポコッと出てきた気がした。
「え?」
それしか言葉が出なかった。
「あのさ……」
佐瀬が言った。
それって、もしかして。
「送るから、乗れよ」
男の子と自転車の二人乗りをするのは初めてだった。
自転車の前カゴには、佐瀬が強引に押し込んだふたつのかばんと、私のミルクティー。
後ろの荷台には、私。
サドルには、佐瀬。
土手に登る坂道を下り、私たちはさっきまで眼下にあった住宅街の中に入っていった。
夕日はだいぶ傾き、影は細長く伸びていた。
私たちは夕日を浴びて住宅街のなかを風とともに突き進んだ。
「佐瀬ー。わかるのー?私の家ー」
耳元でうなる風の音に負けないように、大きな声で佐瀬に話しかけた。
「大丈夫ー。よく行くコンビニだし、緑色のアパートも知ってるー」
佐瀬も負けじと声を張り上げる。
私たちはその後も大声で話し続けた。
今日の授業の話しとか、先生の話しとか、給食の話しとかだ。
佐瀬と話すのはとても楽しくて、なんだかうれしかった。
これがいつまでも続けばいいのに、とさえ思えた。
私の家である緑のアパートの小さな駐車場に、佐瀬と私を乗せた自転車は停止した。
「ふぅ。結構こいだな」
そういって佐瀬は先に自転車を降りた。
「ごめんね。送ってもらっちゃって」
そう言って私も自転車を降りる。
佐瀬は私にかばんと飲みかけのミルクティーを手渡し、ご苦労様、と言った。
「なんか、ありがとね」
「いいよ。俺が勝手にやったことだし。それに……」
佐瀬は一旦言葉を区切った。
「それに?」
私が聞くと、彼は恥ずかしそうにこう言った。
「楽しかった」
佐瀬が何故、私に声をかけたのかはわからない。
きっと、彼にしかわからないだろう。
けれど、わからないままでも良かった。
爽やかで、何処かやんわりとした後味が、私を包み込んだ。
2月の風が吹いた。
その後、ほんの少しだけ私たちは話し、佐瀬は家に帰っていった。
なんだか、佐瀬が少しだけ近くなったような気がした。
翌日の学校から、私は佐瀬とよく話すようになった。
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